ラーナー『ミュージカル物語』

アラン・ジェイ・ラーナー『ミュージカル物語


 「マイ・フェアー・レディ」の作詞・台本を書いたラーナーのミュージカルの歴史である。19世紀末のオフェンバックのオペレッタから始まった大衆音楽劇は、20世紀には英米舞台芸術の中核になっている。この本はロイド・ウェーバーの『キャッツ』(1981年)までだが、そのご「オペラ座の怪人」は世界27国、6万5千回の上演回数を数えている。私も劇団「四季」の上演を見たことがある。25年も上演され続けている。
 ターナーは20世紀アメリカでオフェンバックにはじまるオペレッタの伝統から解放され、ジャズと結びついたことで発展したという。ジェローム・カーン、ハマースタインなどをえて、ガーシュウインがくる。その傑作は「ポーギーとベス」である。ポピュラーソングの形式を用いながらオペラのアリアの深みや感情的奥行きを与えたという。20世紀前半アメリカはミュージカル黄金期を迎え「オクラホマ」は叙情演劇というドラマ性も表現した。その後も「ウエストサイド物語」「王様と私」も登場し、さらにミュージカルコメディの傑作も生まれる。
 この本をよんでみると、ミュージカルは演劇性とダンス、それに音楽の三位一体が必要な総合芸術であるとともに、ポピュラーなヒット歌謡も含む必要があることがわかる・そのうえ、時代状況に見合った感性。ウェーバークラシック音楽で育ったが71年「ジーザス・クライスト・スーパースター」でイエスの「ロック化」を導入し、78年「エヴィータ」では視覚的舞台ファッションを、「キャッツ」では躍動的猫の踊りを、「オペラ座の怪人」では演劇性をとりいれ、代表的ミュージカル作曲家になつた。いま日本のジャニーズ・ミュージカルは空中ブランコバンジージャンプ、ライイングなどアクションを多用するが、果たしてこれがミュージカルに新局面を開くか疑問である。(筑摩書房、千葉文夫、星優子、梅本淳子訳)