巽好幸『地球の中心で何が起こっているのか』

巽好幸『地球の中心で何が起こっているのか』

 地球の内部はいかにダイナミックに動いているのかがこの本を読むとよくわかる。地球の内部は地殻・マントル・核の三層から成っている。海洋と大陸からなる地殻は地球の1%にすぎない。外核をのぞきマントルはじめ「流れる(対流)固体」からなる。マントルと地殻の間にプレートという剛体の岩盤が動き、沈み込み地震など様々な現象を起こす。巽氏は東日本大震災で日本列島が一瞬に5mも移動した原因を地質学から考えている。地球の「核」は5000度の高温なのに地表は平均15度という凄い温度差で、これを解消するため熱の移動が起こっている。対流で物質をリサイクルしグルグル回し熱を地表に運ぶ。それでプレートが動き、地震が起こり、マグマが生まれ、火山が出来る。
この本には日本の火山列島がどう出来たかとか、大陸は海からできるなど地球科学の最新の解明が記されているが、まだまだ地球の内部のことはわからないことが多い。地球の中心は人類が掘った深い孔は13キロ、半径の0・2%に過ぎない。日本の科学掘削船「ちきゅう」は2020年にやっとマントルまで掘削が達すると言う。巽氏の本で地球は自らの力でリサイクルしているという説に学ぶところが多い。大陸地殻は、海域の沈み込み帯でのマグマの活動で作られるが、そのときの廃棄物である堆積物・海洋地殻・反大陸物質がマントルの深いところに貯蔵され熟成し、マグマとして上昇し火山になるリサイクルである。
日本中部山岳地帯は年間4ミリも隆起が続き、富士山も平均すると年間1センチの割合で成長している。大陸製造の廃棄物は、一旦マントルに蓄えられ、何十億年も熟成され南太平洋や南大西洋ホットスポットからリサイクルされると巽氏は考えている。(幻冬舎新書