マックス・ウエーバー『社会主義』『官僚制』

マックス・ウェーバー社会主義
マックス・ウェーバー『官僚制』



 20世紀史の大きな問題は、社会主義の成立と崩壊である。それは「ソ連社会主義」とも「アジア型社会主義」と言ってもいい。ソ連社会主義が何故崩壊したかは様々な考えがあるが、それが成立した直後の1921年に社会学ウェーバーが一つの回答を出し予言している。ウェーバーは、近代社会を経済的な唯物史観でなく(所有説)でなく、合理化による支配説を重視した。科学技術の巨大化、機械化生産、組織のシステム化は、支配の合理化により、官僚制(行政官僚、党官僚、独占企業官僚など)を増殖化させ、その化石化が社会を崩壊させるというのだ。近代社会の宿命である。
『官僚制』という本では、官僚は専門知識を基に「職務上の事柄」を形式的合理化により、公正に非人間的に処理していくと分析している。「的確、迅速、一義性、文書の精通、持続性、慎重、統一性、厳格な服従、」などを価値観としてあげている。現代的大衆民主主義の随伴現象としても見ている。共同社会行為を合理的に秩序付けられた利益社会行為に導く。政治学者・姜尚中氏は主知主義的な合理化が、非人格的・事象的な性格を強め「自然」の有機的循環から離脱していく「反自然」を伴うというのがウェーバーの考えだと指摘している。(『マックス・ウェーバーと近代』)
社会主義』では当時のドイツ社会民主党が目指す社会主義は資本主義よりももっと中央集権的な管理統制の機構を必要とするから、管理制支配が不可避になり、生産手段の社会化を行うため官僚支配を強めざるを得ないとウェーバーは見た。その後ソ連ノーメンクラツーラという党官僚や、いまの中国、北朝鮮の中央主権的官僚支配の存在を鋭く予言していた。(『社会主義講談社学術文庫、濱島朗訳、『官僚制』角川文庫、阿閉吉男・脇圭平訳)