「現代思想 GOOgleの思想」

現代思想」(2011年1月号)『Googleの思想』


 雑誌「現代思想」が特集で「Googleの思想」を組んだ。その中から幾つかの論文を読んだ。まず西垣通氏の「オープン情報社会の裏表」。西垣氏はネットによる直接民主主義がネット専制主義を招くと危惧している。機械情報は一瞬で一様な情報を遠距離に伝達出来る。生命情報は生命的・身体的な自己言及の意味内容からなる。ネット民主主義は一元的な強い言説のみがスポットライトを浴び、「リアルタイムの横暴」が幅を利かせ、民主主義という多元的意見(少数意見)と「時間」がかかる問題に合わない。また汎用人工知能のような普遍的で論理主義の共時性よりも、刻々流れる連続的時間の中でダイナミックにその場で生きる生命情報は重視されなくなる。確かに時間は大きな問題だ。ドミニック・チェン「インターネット時間と自然時間の調停」という論文で計算機の電子時間で、身体=脳の時間的乖離について論じている。興味深い。
 小倉利丸氏の「グーグル的なものについて」は面白かった。グーグルは情報収集産業であり、ユーザのニーズに応じて秩序化・序列化する情報空間の格付けサイトである。この格付けを小倉氏は検閲機能を持つと言う。まだグーグル化は「生体情報そのものの関係主義的個人主義に基づくデータベース化だろうが、そうした世界はすぐそこに来ている」と述べている。グーグルの基盤には、人間を「個人」という不可分な主体と捉える近代主義がある。私たちが自由を手放さないためには、「私」の複数的自己増殖の創造が必要で、それが「検索不可能性」を呼び覚ますと主張している。(青土社