国立歴史民俗博物館編『日本建築は特異なのか』

国立歴史民俗博物館編『日本建築は特異なのか』


いま東アジアという地域が重要な概念になってきている。2009年に国立歴史民俗博物館で企画展示された東アジア(中国、韓国、日本)の建築文化の共通性と特異性を比較展示したカタログで、建築を通して文化全体にも当てはまる。宮殿、寺院(日本で神社も)、住宅の三分野を扱つかっている。東アジアの王権では中国紫禁城、韓国景福宮、日本京都御所が比較されている。中国、韓国との大きな違いは、祖先を祭る宗廟や社稷が日本にはないのが特徴である。私が面白かったのは、宮殿正面の庭が紫禁城では煉瓦、景福宮では花崗岩で、京都御所は白砂で、白河に堆積した砂で水溜りが出来ないため使われ、京都の石庭の原点だという点だ.
宗教建築の形の論理として、中国ではインドと違い、横長、シンメトリー(左右対称)にあると指摘している。この本では中国建築の持っている強い規範性と継続性を主張している。とくに左右対称の構成は住宅建築まで貫かれており、四合院様式(左右対称で中庭様式)住宅に見られ、韓国・両班住宅にも日本・書院造にも左右対称は見られない。また中国、韓国に対し日本だけ特異なのは、宮殿、寺院、住宅とも「基壇」の上に建てる中国、韓国と、基壇のない日本とは違うことである。(例外的に城は石垣の上に建てられる)また日本は住宅に全然「組物」を使わず、一棟の母屋に住機能を集中していることも指摘している。
木造建築では「組物」の美学は大きい。中国では屋根にデザインが重視され、緩やかな軒反りは鳥の羽を連想される。日本でも法隆寺薬師寺東塔、東大寺南大門、禅宗建築に見られるが、その比較も今後必要だと思った。住宅の比較も今後の課題だろう。また高層建築だった仏塔も中国、韓国と日本は違いっているが、仏教の違いと絡めもう少し分析して欲しかった。(歴史民俗博物館振興会)