ドラッガー『ドラッガーの講義』

ドラッガードラッガーの講義』

経営学ドラッガーの晩年1992年―2002年の講義を編纂した本である。ドラッガーはポスト資本主義社会を知識社会、知識労働社会ととらえている。知識労働社会はこれまでの組織の内部重視の経営管理では、成り立たなく成っていると考える。外部とのネットワークの視点、専門家労働のあり方、所有よりも成果の仕事の重視などが述べられている。ドラッガーは生涯「学ぶ」こと、自己管理(自分自身を経営する)、自分の居場所の探求、企業とともに非営利セクターの重要性を指摘する。
 私は2003年クレアモント大学院大学での講義「会社の未来」が面白かった。「所有者によるコントロールから、戦略によるコントロールへ移行する、あるいは、事業に関係したものすべて所有する巨大集積企業から、提携や相互協調に基づくある種の同盟へと移行する」という議論を踏まえ、知識の生産性を向上する専門的仕事にはアウトソース(外部委託)というネットワークが増えると言う。
インダーネットによる情報は、新しい流通チャネルなのか、新しいマーケットなのかを問い、インターネットが情報を顧客に移転していると認め、世界に距離がなくなったローカルなマーケットにより企業はどう変わるかをも考えている。グローバル世界でいま進むEUなどの「経済圏」の時代はなにをもたらすかまで視野にいれている。この講演が死ぬ三年前の93歳の時に行われていることに敬意を表したい。(アチーブメント出版・ワルツマン編・宮本喜一訳)