ジョン・レノン『回想するジョン・レノン』

ジョン・レノン『回想するジョン・レノン
12月8日はビートルズジョン・レノンが射殺されてから30年目の命日である。60年代の若者に与えたレノンの音楽や生き方は生き続けている。この本は71年に「ローリング・ストーン」誌に掲載された長期インタビューで、ビートルズ解散以後のレノンが、ビートルズとは、公演旅行、LSD体験、ポール・マツカートニーとの衝突、ヨーコとの出会いなど赤裸々に語ったものである。それ以上にレノンの考え方や感性が吐露されていて興味深い。三木卓訳のレノン詩集もある。
レノンは二つの自己(セルフ)の解放と実現を追い求めた。一つは他から強制される枠組から「自分である状態」を探しだす自己解放。それは、社会、学校、家族だけでなく、自己の内面にある欺瞞からも解放。その手段がロックンロールだった。レノンは語る。「自分が一番好きなのは、くだらないものがはいらない単純で原始的なロックが好きだ」大人により構築された馬鹿な社会に巻き込まれず生命力を充実して生きようという根源的悲鳴は、若者の原点としていまも生きている。
もう一つはこの本のテーマとして語られているが、ヨーコとの出会いにより、「愛=平和」という他者との完全なコミュニケーションによる自由なユートピアへの価値の転換である。「おお愛するひとよ、おれの人生ではじめて、おれの心は大きく開いている」「愛は触れること、触れることは愛、愛は手を差伸べること、差伸べることは愛、愛は求めている、愛されることを」訳者の片岡義男氏はレノンの「想像力」とは「単なる空想でなく・精神上の完全なコミュニケーションのことだ」と解説で述べている。(草思社片岡義男訳)