三上修『身近な鳥の生活図鑑』

三上修『身近な鳥の生活図鑑』

拙宅の小さ庭にも、多くの鳥がやってくる。柿の実を残しておくと、色々の鳥がついばみに来る。だが私は、あまり生態にくわしくない。三上氏の本は、身近にいるスズメ、ハト、カラス、ツバメ、ハクセキレイコゲラの生態を観察し詳しく書いているのでよくわかる。都市で人間がこれらの鳥とどう付き合うかまで触れている。
三上氏の観察では、最近スズメもハトもかなり減ってきているという。鳥にとって都市は新しい環境だが、都市に住める鳥は50種ぐらいだという。スズメは人の側にいる鳥だが、私は三上氏の本で生態を知った。メスがオスを選び、オスにはペニスがなくオスとメスは総排泄孔をすりあわせ交尾する。スズメの子は草食でなく親が昆虫など肉食で育てる。巣だった子スズメの半数は冬を越せない。
日本にいるハトは10種で、ドバトとキジバトが多い。ドバトの起源は伝書鳩からで、レース鳩もそこからで、人間の品種改良で変わり、それが野生化しとのがドバトだという。基本は若芽、花の蕾、実など植物食である。鳩は食道の部分でミルクをつくり、そのビジョンミルクを子供に飲ませる「哺乳類的」子育てをする。
鳩が首振りをして歩くのは、視界を固定し見やすくするためだという。太陽の方向、地磁気、地形、臭いなどを測定し、自分の巣に戻る。カラスはいまやごみあさりや、子育ての巣防衛のため襲い、人に嫌われている。カラスはくちばしの大きさで、ハシボソカラスとハシブトカラスの2種類に分けられ、生態はだいぶ違う。ボソは歩き、ブトは跳ねる。
ブトのほうが肉食系で攻撃的で、ボソは器用である。人を襲うのはブトである。襲う前に色々の事前行動があり、攻撃は最後通牒だという。ツバメは燕尾服というように長い尾を持つがメスにもてるためだ。
     ハクセキレイは都市には新参者で尾を振るが、北辰一刀流の剣先を動かす「鶺鴒の尾」はそこから来ているという。剣術には「ツバメ返し」という剣法もある。年下の愛人を「若いツバメ」というが、女権論者・平塚らいてうの年下の恋人の手紙の言葉から来ているという。若いツバメの独身鳥は、夫婦の巣からヒナを投げ落とすあこぎなことをする。
三上氏は、鳥と人の軋轢にも触れている。鳥に餌をやるのはいいのか、スズメを飼っていいのか、鳥の巣の撤去していいのかなど、鳥と人の適当な距離をも述べている。猪や熊、鹿などの野生動物が都市に出てくる昨今、生物多様性と被害との間のバランスをどうとるかが課題になる。‘ちくま新書